あとがき
『喉笛の塔はダミ声で歌う』をここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
2018年から連載をはじめ、途中、長らくの更新停滞期間を挟みつつも、ついに末尾に「終わり」の三文字を刻むことができました。
これまで感想や応援をくださった皆さま、くじけそうになる心を支えてくださり、ありがとうございました。
本作はもともと、長編ファンタジー小説として某新人賞に投稿した小説でした。
当時は、投稿小説を何作書きあげても、頭の中に思いえがいた物語を小説の形で表現できず、「向いていないのかも」と苦しみもがいていた時期でした。
「もし、この小説が形にならなかったなら、小説家になる夢はあきらめよう」
その想いを胸に、何度も奈落の底に落ちる夢に苦しめられながらもどうにか完成。
分厚い原稿を手に、はじめて「ああ、書きたかったものが少しだけ書けた」と思うことができました。
肝心の結果はといえば、本人のすがすがしい思いなどそっちのけに、選外。
けれど、とてつもなく大きななにかを得て、それまで背負ってきた重苦しいものを少しだけ手放せた……そんなきっかけをくれた小説でした。
本作は投稿小説『喉笛の塔は歌う』を、ほぼ原形を留めないほどに大改稿したものとなります。最終的には、新書1冊分だった物語が、文庫3冊分ぐらいの分量になりました。
完結までには7年もの歳月がかかってしまいましたが、己の技術を何段階も底上げしなければ書けなかった小説でした。投稿当時は書けなかったものが、だんだんと書けるようになっていったのは、嬉しい思い出です。
更新も、成長も、呆れるほどゆっくりだった本作を、長いあいだ見守ってくださってありがとうございました。
「下水道ファンタジー小説」「エレクトリックパンク小説」という需要が少なそうな小説を、ここまで読んでくださった奇特な皆さ――失礼。物好き極まりない……ん? ……知的好奇心あふれた皆さまと巡りあえて、とっても幸せでした。
オースターとトマの物語はこれにて終了となります。
彼らがこれからどんな未来を歩んでゆくのか……ここから先は、読者さまの想像にゆだねられたらと思います。
最後に、閉所恐怖症、暗所恐怖症のくせに、下水道は大好き!というドMな翁にたくさんのインスピレーションをくれた参考文献をご紹介して、物語を閉じようと思います。
自由の翼をもって、皆さまが思うままの世界へと歩んでいけますように。
また別の小説でお会いできますことを祈って。
2025年9月5日 翁まひろ
◎おもな参考文献
『pen PLUS「21世紀のエコライフを支える下水道のチカラ」』
『pen PLUS「大いなる可能性を秘めた下水道のミライ」』(CCCメディアハウス)
『地下水道』白汚零(草思社)
『パリ地下都市の歴史』ギュンター・リアー&オリヴィエ・ファイ著/古川まり訳(東洋書林)
『ソハの地下水道 』ロバート・マーシャル 著/杉田 七重訳(集英社)
『写真と文によるヴィクトリア朝ロンドンの街頭生活』ジョン・トムソン&アドルフィ・スミス著/梅宮創造訳(アティーナ・プレス)
『小さな大国ルクセンブルク 美しき偉大な小国』建部和仁著(かまくら春秋社)
ランファルド大公国のモデルはルクセンブルクでした!
いつか行ってみたいなあ。
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