自販機の上の女
期末考査を明日に控え、大方の大学生が案外真面目にボロアパートにこもっている、冬の深夜。
例にもれず、朝まで勉強コース「完徹」を決めこんだ陣内は、靴下にサンダル、近所のおばちゃんにもらった赤いどてらで武装し、凍てつく路地に飛びだした。
貧乏学生に優しい格安ボロ物件がゴロゴロ転がる辺り一帯は、「学生街」などとよく言ったもので、いまどきコンビニのひとつもない狭くるしい通りだ。
あるものといえば、歯抜けたじいちゃんが番頭台で舟を漕ぐ「鶴屋銭湯」。洗剤のきつい匂いがたちこめた「コインランドリー マーサおばさん」。洗濯機三台のうち二台が、マジックで「故障中」と書かれたガムテで蓋を閉じられた、絶望的に使い勝手の悪い無人店。
それから、せめてもの良心か、硬貨をタダ食いしない程度には新しい、自動販売機が一台。
電灯下に設置されたそれは、「売切」の赤いランプを輝かせ、馬鹿でかい蛾を身にまといながら、今日も真向かいの空き地を見つめている。
コンビニ以上に慣れ親しんだ自販機の前で足を止めると、陣内はどてらのポケットに手を突っこんで小銭を探した。
「百二十円ちゃん、百二十円ちゃん、どっこでっすかー」
妙ちくりんな節をつけながら、三枚の硬貨を掴みだし、機嫌よく体を揺らしながら、販売中飲料の見本の列を見上げる。
そして陣内は、ぽかんと立ち尽くした。
別に、十円足りなかったことに今さら気づいた、とかそういうあれではない。
全部に「売切」マークが点滅していて絶望したとか、ホットコーラとホットカルピスどっちを飲むかで際限なく悩み出してしまったとか、急に百二十円が死ぬほど惜しくなったとか、そんな下らないことで呆然としているわけでもない。
自販機の上に、女が一人、寝そべっていた。
「……」
陣内は、自分の身長よりも高い自販機の上から自分を見おろす瞳を、呆気と見つめかえした。
それは、貧乏暇なし彼女なしの苦学生には目の毒にしかならないほど愛らしい少女だった。
長い睫に縁取られた、驚くほど大きな瞳は、夜露を固めたようなすみれ色。
ふわりと波打つ羽のように軽そうな髪は、透き通った白金色。
どうやら、ガイジンさんのようだ。
少なくともモンゴロイド系ではない。
だからといって、それが真冬に、自販機の上で寝転がる理由にはならないだろうが。
ガイジン、ビジン、ヘンジン。
陣内は数秒の葛藤のすえ、くるりと自販機に背を向けた。
「ギャアァァァァ!」
瞬間、彼は悲鳴を上げた。
絶叫しながら自分の腹を見おろし、そのまま気絶しそうになる。
自分の腹から生白い腕が二本、ぐにょんと生えていたのである。
錯乱した頭で、陣内は自分が「小さく前ならえ」をしているのだと思った。「小さく前ならえ」をしていると思った彼は、小学校入学当初ばりの張り切りようで、「なおれ」の姿勢をとった。だが、「なおれ」をしたはずの二本の腕は、相変わらず、陣内の腹から生えたまま。
「!?!?!?」
完全な恐慌状態に陥っている彼を尻目に、腕は陣内の胸元でピアノでも弾くように指をひらひらと動かすと、ふたたび腹のなかへと引っこんでいった。
強烈な悪寒が、腹から背中にかけて駆けぬけ、全身に鳥肌にたつ。
そこでようやく陣内は正気を取り戻し、悪寒の軌跡を追うように、背後の自販機を振りかえった。
白い腕は、ちょうど女のもとへと、縮むように戻ってゆくところだった。
陣内は唖然と女を見あげ、そこで初めてあることに気がつき、口をパクパクと開閉させた。
冬の夜道、自販機だけをこうこうと照らす電灯の下。
女の肌が半分透けて見えていた。
「あ、なな……な……ななななな……な!? な!? なぁ!?」
動転しきった陣内は目尻に涙を浮かべて、意味もなく女に同意を求める。
女は答えず、なにか言いたげに口を開くと、陣内の腹を貫通させた指先で、喉もとを苦しげに掻きむしった。
「か、掻けってぇ!?」
裏返った声で問いかけると、女は焦れったそうに首を横に振った。自販機の上でへたばって、赤い舌を出し、音のしない荒い呼吸を繰りかえす。
陣内はどうしたらいいのか判断がつかず、周囲を見回した。しかし、周辺のボロアパート群の窓辺には、明かりは灯れど、人が現れる気配はない。
いつもは自販機の前には、世間にいじけた学生たちが、見事なウンコ座りで己の不真面目っぷりを全力披露しているというのに。
「陣内ちゃん、コシヒカリ十合よこせよ」と親からの仕送りをたかってくるのに。
今日に限ってひとりもいないなんて、湯島天神の学業守りクソ喰らえ。
女は喉を押さえていた手を離すと、自販機のボタンを叩きはじめた。
もっとも透けた手のひらは自販機をすり抜けるだけで、ボタンなど押せやしないのだが。
そこにきて、陣内の冷静とはほど遠い頭がひとつの結論をはじき出した。
「あ、なに、か、かか乾いてるんだ、喉、もしかして、あ、あんた」
カチカチに固まった口で、思いついた単語から片端に連ねてゆく。
女はただでさえ大きな瞳をまん丸にして、こくこくと嬉しそうにうなずいた。
「で、俺に、なにか買えっとか、そういう、あの、あれの、その」
こくこくこく。
「──ど、どれっすか」
陣内は解放されたい一心で、脳みそぶち撒く勢いで悩んだあげくに、そうたずねた。
自販機に並んだ缶の見本は一列しかない。
左半分が青色《コールド》で、右半分が赤色《ホット》だ。
やっぱり冬だし寒いし、幽霊も寒そうに向こうが透けているし、《ホット》だろうか。
でも、喉が渇いてるときは、冬でも《コールド》はイケる。となると、《コールド》だろうか。
待ちたくもない女の回答を待っていると、女はぐっと身を乗り出し、顔だけさかさまの状態で見本の列を眺めまわした。その様子は、某ホラー映画の某貞子そっくりで不気味さきわまりない。
よかった。目の前にあるのがテレビじゃなくてほんとよかった。
だが、たった一列の見本を念入りに眺めていた女は、やがてひどく困惑した顔で陣内を振りかえってきた。
「え、え、えーえーえーえー、ほ、欲しいの、ないの? ですか?」
陣内はオロオロと視線の意味を探る。
ぶんぶんぶん。
女が首を振る。違うらしい。
「ぬ、ぬるいのがお好き?」
ぶんぶんぶん。
もちろん、そうだろう。
「えーと! えー」
ぜぇぜぇぜぇ。
女がこれみよがしに肩を荒らげ、喉を爪で掻きむしりはじめる。パニック状態で立ち尽くしていると、女は業を煮やしたのか、陣内に向かって不気味なまでに白い両腕を伸ばしてきた。
「ギャァアア!」
陣内は恐怖に目を剥き、握りしめたままだった百二十円を死に物狂いで投入口にぶち込んだ。
チャリン、チャリン。
やけに軽いその音を聞いた途端、女はふたたび頭を逆さまにし、興味津々、ボタンの列を凝視した。
「す、すすす好きじゃなかったら、すんません!」
まるで好きな先輩に告白代わりの贈り物でもする中坊みたいな台詞を吐き、陣内は勢いよく頭を下げながら、アクエリアスのボタンを叩くように押した。
ピッ。
一列の自販機には、コーヒー(無糖・低糖)か、スポーツ飲料か、茶ぐらいしかない。茶ではなく、アクエリアスを選んだのは、自分が小学校から高校までバスケ部に所属していたので、その本能に叩きこまれた習慣でだった。
とにもかくにも、ピコピコピコピ……コ……ピ……コッ……という「当たったらもう一本」の情けない音が「はずれ」を弾きだし、ガコンガコンという音とともに、少し角のつぶれた缶が、自販機の下の取り出し口に落ちてくる。
陣内はごくりと喉を鳴らし、緊張で頭を真っ白にしながら、腰を屈めて缶を取った。
そして、丁寧にプルタブを開けてから、さかさまの女に震える手でアクエリアスの缶を差しだす。
女は苦しげに細めていた瞳をぱっと輝かせ、ふたたび陣内に飛びかかる勢いで、両手を缶へ伸ばした。
スカッ。
「…………」
お約束通り、女の透けた手は、缶を通りぬけていった。
勢いあまって、自販機から転げ落ちそうになり、両手をばたつかせる女。陣内はそれを絶望的な顔で見あげ、口元を引きつらせる。
「それじゃ」
何食わぬ顔で自販機に背を向けた陣内の腹から、ふたたび腕がにょきっと生え、彼はまたも悲鳴をあげた。
駆け抜ける悪寒に全身を震わせながら、陣内は涙目になって自販機の上の女を振りかえる。
「どうしろってんだよお!」
一方の女も、苦しげなうえに、今にも泣きだしそうな様子である。
陣内は冬には冷たすぎるアクエリアスを握りしめたまま頭を抱えた。
「帰ろうとすりゃ腹から腕生えるし、アクエリアス買ってやれば飲めねぇし、俺はただコーヒー買いに来ただけなんだよ、明日から期末なんだよ、幽霊が頼りたがるような有能な霊能者でもないし、電波系でもないし、普通の貧乏な缶ジュース代すら惜しい、親からのコシヒカリ万々歳な、切ない哀しい苦学生なんだよー!」
決して八つ当たりではないのだが、八つ当たりのテンションでぶちキレると、女は自販機の屋根に顔を伏せ、うっうっと肩を震わせはじめた。
まるで、暴力亭主にひどい言葉を投げかけられ、畳の上で声もなく泣き伏す哀れな妻の図である。
「泣きたいのは、俺の方!」
涙する女の姿に、陣内は、本日数度目にして最大のパニックに陥った。
漫画で言うなら、目玉をぐるぐるさせて、頭を抱える感じだ。
だが――。
彼のパニックも長くは続かなかった。
哀しげに泣く女を見ているうちに。その透明な肌を、その透明な涙を、苦しげに肩で呼吸するさまを見ているうちに、どうしようもなく、複雑な気分に駆られたのだ。
「……すみません」
長い沈黙のすえ、陣内は缶を両手で握りしめ、もごもごと口の中で謝った。
女は頬に涙を伝わせながら、陣内を不思議そうに見おろした。
「かわいそうだとか……思うんです、けど、でも、俺なにもできなくて」
実際、考えてみると哀れな話だった。
幽霊になったいきさつなどはさっぱり不明だが、たかだかアクエリアス一本を飲めずに、こうも悲しげに泣かなくてはならないなんて。
「俺も米一粒すら食えなかった時期とかあったんすけど、あん時は本当辛くて……」
とんちんかんに同情をすると、女は感極まった様子で目を輝かせ、ぶんぶんと首を横に振った。
その様子は、「いいの、気にしないで」と言っているようで、陣内までなぜかつられて涙ぐんでしまった。
「助けてあげられたらいいんだけど……」
どてらの袖で、ぐしっと涙をこする。
「でもマジで無理っす、すみませ──ッギャアアアー!」
ついでに情けなく本音を言いかけたところで、突然、女が腕を広げ、陣内に抱きつかんと自販機の上から飛びおりた。
目玉が突き出るほど驚いた陣内は、反射的に悲鳴をあげ、飛びかかってくる女を思いきりよけた。
べちゃっ。
という音がしそうな体勢で、女が地面に墜落する。
カエルの死体よろしく、うつむけに倒れたまま動かない女。
「す、すすす、すっま、す、すみ……すみません!」
最悪な事態に陥ったことに気付いた陣内は、小刻みに頭を下げまくる。
それと同時に、じょぼぼーと、何かが零れる音がした。
「ッあー!」
見ると、謝った勢いで傾けてしまった缶の口から、中身が盛大に零れ出てしまっていた。
陣内は次から次へと起こる恐ろしい事態に、もはや呼吸をすることすらままならない。
あたふたと缶の角度を元に戻したものの、足元の地面は黒く濡れてしまっていた。缶の軽さから判断しても、三分の一ぐらいはなくなっているようだ。
辺り一帯に、アクエリアスの甘い香りが、ふわんと漂いはじめた。
「あ、あの」
おそるおそる女を見おろすと、女が突然、飛び起きた。
香りに惹かれた様子で辺りを見まわし、陣内の足元にアクエリアスの水たまりを見つける。
泣きだすのだろうかと戦いて見ていると、女はいよいよ某貞子よろしく匍匐前進で水たまりに接近し、地面すれすれまで顔を寄せた。
あまり不気味な光景に、顔を引きつらせる陣内。怖い、怖すぎる。
と、女が閃いたとばかりに、手のひらを胸の前で叩いた。
「な、なんすか、次は」
思わず先んじてたずねると、女は苦しげだった顔に笑みを浮かべた。
そして、陣内の背後に広がる黒い空き地を、意味ありげに見つめた。
人工の明かりの下から見た空き地は、塗りたくったような黒色に見えたが、実際立ってみると、満月に近い月光のおかげで思いのほか明るかった。
毎晩のように自販機に通っていたというのに、目の前の空き地に足を踏み入れたのは、今晩がはじめてだ。
陣内は「売切」ランプのついた自販機を奇妙な気分で振りかえる。
距離的には、ほんの数歩。けれど、どうしたわけか、自販機までがひどく遠く感じられた。
まるで別世界にでも迷いこんでしまったかのようだ。
現実感というものが、失われてゆく――。
自販機の上に、もうあの女はいない。今は空き地の中心に膝をつき、天を仰いで、降りそそぐ月光を浴びている。
時おり、苦しげに喉を掻きむしっているが、みずからの閃きが間違いでないことを確信しているのだろう、大きな瞳にもう涙はなかった。
陣内はもう一度だけ自販機を振りかえり、今度は足元の地面に視線を落とした。
途端、なけなしの気力が急落してゆくのを感じる。
冬の空き地は、なんと寒々しいことだろう。
わずかに生えた草すらも、連日、早朝に立つ霜柱にやられたのだろうか、数日洗っていない髪の毛のように地面にへばりついている。
言いたくないが、なんというか、過去に殺人事件があっても不思議ではないようなシチュエーションだった。外人さんの死体がこっそり埋まってそうな感じだった。
陣内は緊張に乾いた唇を嘗め、女の方に歩を進めた。
なにをどうするかは、女のジェスチャーでだいたい見当がついている。
あとは実行あるのみだ。
持っていられないほど冷たいアクエリアスの缶を、左手から右手に移す。
戸惑いがちに女の様子をうかがうと、女は喉を陣内を振りかえり、はかなげに微笑んだ。
かわいいなあ。
そんな場合ではないのに、女の愛らしさに改めて胸を衝かれた陣内は、腹を決めた。
明日は、期末考査。
教授に目をつけられている、心理学。
追試はしない。女は成仏させる。
苦い無糖コーヒーを買って、目蓋にメンソレ塗って、徹夜で勉強だ。
陣内の決意に呼応するように、女が月を仰いで、ぱかりと口を開く。
陣内は女の傍らで足を止める。
あとは、躊躇わなかった。
陣内はアクエリアスの缶を傾けた。缶の口から、白みがかった液体が溢れだし、月光を受けて、水色とも桃色ともつかない微妙な色が弾ける。
アクエリアスは、ぱかりと開かれた女の口へと零れ落ち、そして案の定、女の身体をかすりもせず、土の中へと吸いこまれていった。
けれど女は、嬉しげだ。
恍惚とも思える表情で、喉を潤さないアクエリアスを受け入れる。
土はどんどんと水気を含み、女の苦しげだった表情にはやがて、満開の微笑みが宿る。
そのとき、突如として風が渦巻いた。
「……っ」
女の表情に魅入られていた陣内は、突然のつむじ風に驚きながら、なおも缶を傾けつづけた。
鼻腔をアクエリアスの芳香がかすめていった。
それとともに、どこか覚えのある甘い香りが、風に乗って空き地いっぱいに広がってゆく。
女が、目を見開いた。
ケルジャイィエアポイウエィアエオイルオイウテテアオイル…!
今まで閉ざされていた口が、ついに言葉を発した。
歓喜に満ちた声。
月にまで届かんばかりの絶叫。
日本語ではない。英語でもない。聞きかじったことのあるドイツ語やフランス語、スペイン語や中国語とも違う。
どこの世界のものとも思えない、不思議と耳に馴染む音。
「……あ!」
陣内は声をあげた。
アクエリアスが空になるのと同時に、女が歓喜の笑い声をあげ、泥と化した地面へと沈みはじめたのだ。
爪先が、
足が、
太ももが、
腰が、
胸が、
肩が、
やがて愛くるしい、少女の顔が。
泥へと沈み、消えてゆく。
なんて、あっけない。
それが女の最後だった。
嵐の後に似た静寂が、甘い香りとともに空き地に残される。
陣内は、あまりに突然の女の「終わり」に、力なく膝を落とした。
空っぽになったアクエリアスの缶が手から落ち、カラリと地面に弧を描く。
背後では、自販機が相変わらず悲しげに、「売切」の赤いランプを灯している。
目の前には、アクエリアスを吸いこんで、黒くぬかるんだ地面。
呆然自失していた陣内は、ふと、目を見開いた。
女の消えた地面に、なにがきらりと光っていた。
アクエリアスの香りが浸みこんだ地面に顔を近づけた陣内は、思いもよらぬ結論にたどりつき、目を丸くした。
そして長い沈黙の後、
ぷっ。
誰もいない空き地で、吹き出してしまった。
ついには堪えきれず、陣内は目尻に涙が浮かぶまで笑いつづけた。
+++
「まさか幽霊じゃなくて、花の妖精さんだったなんてな」
白い朝陽が鋭く目に刺さる、冬の早朝。
無事に期末考査を終え、待ちに待った冬季休暇を迎えた「学生街」は、窓辺から聞こえてくる誰かの鼾以外は、しんと寝静まっている。
ひとり空き地に立った陣内は、苦笑いして呟き、その場にしゃがみこんだ。
凍てついた風の通り道。
冬枯れした空き地の中心。
そこに、たった一輪だけ、小さな花が咲いていた。
「知ってたら、水、アパートから持ってきたのに」
枯れ草にまぎれながらも、しっかりと空を仰ぎ、健気に、誇らしげに、可憐なすみれ色の花弁を広げるそのさまは、あの夜、苦しげな姿を見せていた女とは結びつかない。
陣内は空き地に来る途中、例の自販機で買ったアクエリアスのプルタブを開けた。
甘い匂いのする水を、そうっと花に撒いてやると、花は嬉しげに葉っぱをぱたぱた上下させた。
「すっかりアクエリアスにはまっちゃって」
陣内は、すんません、俺のせいっすね、と頭を掻き、笑った。
「明日も来ますから。アクエリアスを持って」
そして陣内は、ガバッと花の前に土下座した。
「だから毎晩、自販機の上で待ち伏せすんの、よしてください! 怖いから!」