ホーバーの思いもよらぬとんだ一幕

11

 ハングリー・キング号の甲板は、美しい色で溢れかえった。
 シーパーズの船員が、船内から次々と運びだしてくるのは、竹細工の鳥籠だ。細く裂いた竹で編まれた鳥籠の中には、鳥が一羽ずつ入っている。止まり木に爪をかけ、優雅に羽繕いをする姿は、目にも鮮やかな極彩色。タネキア大陸のむせかえるような緑が似合うであろう、熱帯の鳥だった。
「わぁ、きれー」
 望遠鏡で、その様子を見ていたラギルニットは、溜め息をついた。
 船べりに並んだ船員ひとりひとりの手に、鳥籠が渡されてゆく。彼らは粛々と籠を掲げもつと、そっと小さな開き戸に手を掛けた。
『この鳥はご存知かな? バクスクラッシャーの船員たちよ』
 ようやく拡声器に慣れたクロック船長の声が、甲板中に轟く。
 バックロー号の甲板にひしめき集まったバクスクラッシャーの船員は、顔を見合せた。
『おお、知らんのも無理はないぞ。この鳥は、マヤメナ国の熱帯林にしか生息しておらんからな。非常に賢くての、どこにおってもマヤメナ国の森に、迷わず帰ってきおる』
 へぇ、と単純に感心した声が上がった。クロック船長のなるほど鳥講座である。
『ここに、六十羽おる。彼らが緑の林冠から一斉に羽ばたくさまは、虹を散らしたように幻想的での……。ぜひ、諸君にも見てもらいたいと連れてきたのだよ』
 クロック船長は目を細めると、すっと拡声器を持たぬ手を掲げてみせた。
 それを合図に、鳥籠を持った船員がいっせいに開き戸を開け放った。
「わぁ……!」
 バックロー号上の船員たちから歓声があがった。
 解き放たれた六十羽の鳥は、いっせいに鳥籠から飛び立った。七色の翼を羽ばたかせ、りん……と優しく鳴きながら、螺旋を描いて上昇してゆく。最初の一羽が旋回すれば、全ての鳥がその軌跡をたどり、真っ青な空の中、それはまるで虹が踊っているようだった。
「うおお! やるじゃねぇか、クロック船長!」
「ひゃっほー!」
 そして鳥たちは、たっぷりと海賊たちを楽しませたあと、優雅に翼を広げて、さらなる南を目指して飛び去っていった。
「すごいすごい! きれいきれいきれい!」
 ラギルニットも我を忘れて、ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねた。甲板も拍手喝采に包まれ、珍しくクロック船長コールが起こった。
 ――ホーバーたち三人を除いては。
「……鳥って」
 予想外の事態に、ガルライズは顔を苦笑にゆがめた。
「なるほど、”伝書鳥”ってわけっスか。うーん、予想外だったっス」
 シャークの言葉に、ガルライズが肩を竦めた。
「そりゃそうだわ。誰が鳥を船に積んでるなんてこと、想像できたよ? 今ごろ、船倉は鳥の糞だらけだぞ」
「クロック船長、さすがやることがアホっス。そんでもって、悔しいけど、とっても効果的っス。――さあ、いよいよ仕掛けてくるっスよ、ホーバー」
 ホーバーは目を眇めた。
 バックロー号の反応に気を良くしたのか、クロック船長は満足げにうなずき、ふたたび拡声器を持ちあげた。
『喜んでいただけたようで何より! 今の鳥たちは、真っ直ぐにマヤメナを目指して飛び去る。数十分もすれば、故郷の熱帯林にたどりつき、残してきた奥さん鳥相手に、”人間たちがぽかんと自分を見上げていたぞ”と土産話に花を咲かせることだろう』
 珍しく小粋なことを言うクロック船長に、両船からやんやの拍手が起こる。たった今くり広げられた美しい光景を前にしては、バクスクラッシャーの船員たちももはや反感の気持ちを忘れてしまっていた。
 クロックはその隙をついた。
『さて、と。今のはちょっとした余興だ。本命は、この鳥』
 クロックの手には、いつの間にか、ひときわ立派な鳥籠が吊るされていた。
 これまでの鳥も十分に美しかったが、今、示された鳥籠の鳥は比較にならない美しさだった。羽一枚一枚の色が異なり、その全てが宝石のような光沢を放っている。艶やかさすら感じさせる赤い瞳は、鈴の音で鳴くたびに、色を微妙に変えた。
『わしの鳥じゃ。この鳥だけは、熱帯林には行かぬ。彼女が帰りつく場所は……』
 効果的に、クロックは口を閉ざした。
 彼の目はまっすぐに、バックロー号の舵台に立つホーバーに向けられた。
『……ホーバー殿は、知っておるな?』
 つられて舵台に目を向けたバクスクラッシャーの船員たちは、困惑した。
 舵台に立つ自船の副船長の顔には、賛美の微笑もなければ、いつも浮かんでいる苦笑も、穏やかな表情もなかったのだ。
 わずかに青ざめた顔は、クロックが手にした鳥籠を、険しい目で見つめている。
『二十分、かのう』
 クロックは平坦につづける。
『彼女が、行って……』
 拡声器を通してなお、感情の篭もらぬその声。
『……戻ってくる。それに要する時間は』
 甲板が、水を打ったように静まりかえった。
『そうじゃ! わしとしたことが、忘れるところであった』
 クロック船長は、唐突に、ひょうきんな声をあげた。
 凍りついていた甲板が、びくりとその大声に反応する。
 船員たちは完全に呑まれていた。クロックの言う意味など、まるで分からないというのに。
『我が娘デトラナとの結婚じゃが、はっきりとした答えを、まだ聞いておらんかった!』
 そしてふたたび、甲板は動揺にざわめいた。
『まあ、決定であることには違いないのだが。わしとしては、おぬしの口から明確な答えが聞きたい。……どうも、バクスクラッシャー諸君もそのようではないか? ん?』
 その言葉に、バクスクラッシャーの船員たちは目を見開いた。
 ホーバーは無言のまま、太ももの脇に垂らした拳を固く握りしめた。
『そういうことであるからして、改めて問うとしよう。――わしの娘と、結婚してくれるな? ホーバー殿』
 クロック船長は、鳥籠にゆっくりと手を伸ばし、開き戸に手を掛けた。
 わずかに開いた戸の隙間に、鳥が焦れたようにくちばしを突きたてる。
 だが、まだ開いてはいない。
 何故か、その場にいた全員が、その戸が開くのを恐れた。
 開いてしまえば、後戻りができない。そんな予感がした。
 全員の視線が、ホーバーを見つめていた。ラギルニットもまた、今にも泣き出しそうな切実な目で、ホーバーを見上げた。
 強烈なまでの視線の嵐を感じながら、ホーバーはそれでも答えられない。
『……どうした? ホーバー殿。恥ずかしがる必要はない』
 ――何故、さっさと断らないのだ。
 船員たちの間に、動揺が走った。
 動揺はあっという間に甲板中に伝播し、奇妙な緊迫感が船を包みこむ。
 船員たちは期待をしていた。冗談じゃないと、あっさり断るホーバーを。
 なのに、それなのに、ホーバーはまるで思い悩むかのように押し黙っている。
 まさか。悩む? 何を悩む必要があるのか。いつものホーバーならば、さっさと断っている場面だ。何をためらっているのだ。
 ――まさか、結婚とか、本気で考えてるんじゃ……!?
 船員たちはガビンッと顔を歪めた。
 緊張に時を止める甲板の中央で、バザークもまた、何も答えないホーバーを困惑して見上げた。やはり何かがあるのだと察する。ホーバーは断る気なら、決して気を持たせずに、最初から断る男だ。それがこの後に及んでもなお言いよどむ。
 あの鳥。鳥が行きつく先に、ホーバーを迷わせる何かがあるのか。
 ――否定しろよ。結婚しないって、大声で言えよ。
 バザークは広がってゆく動揺をひしひしと感じながら、願うように息を呑む。それは船員全員の期待だった。早くこの不安を取り除いてほしい。結婚なんてしない、と大声で宣言して、大丈夫だと安心させてほしい。って、なにその乙女っぷり!?
 動揺にまんじりとしながら、船員たちはそれでも切に願う。
 ――大丈夫だと、言ってくれ。副船長。
『ホーバー殿、さあ』
 クロック船長が含み笑いで、うながす。
 ホーバーの目は、クロックが手を掛けた鳥籠に向けられている。
「ホーバー。デトラナは多分、動くぞ」
 背後に立っていたガルライズが不意に、その耳に囁きかけた。
 ホーバーは息を詰め、小さくうなずいた。ゆっくりと顔を上げると、クロック船長に向けて、芯のない揺らいだ声で言った。
「……すこし、考えさせてくれ」
 ざわりと甲板が波打つ。それは誰もにとって、期待した台詞とは違うものだった。
 ホーバーは血の気の失せた唇を引き結ぶ。
『ほお!? “考えたい”と? ホーバー殿、それは男らしくない答えだ。デトラナも早くお前の返事を聞きたかろう。女子を待たせてはいかんと思わぬか?』
 静まりかえった海には、ホーバーの声は拡声器がなくてもクロックに届いたようだった。クロック船長はこれみよがしに驚いて、拡声器に向かって声を張りあげた。
 ホーバーは歯噛みし、それでも答えた。
「三十分でいい」
『いったい何を考えようというのだね? 結婚にあたって、なにか「心配事」でもあるのかな?』
 心配事。その言葉に反応したのは、当のホーバーではなかった。
「ホーバー、いいんだよ。別に」
 小さな、けれどはっきりした呟き。
 ホーバーは意表をつかれて、ラギルニットの振り向かない背中を見つめた。
「……ラギル?」
「おれの心配、してるんだよね? おれ、大丈夫だよ。おれにはみんながいるから。バクスクラッシャーのことはいいから。……だからホーバーは、ハングリー・キング号の船長さんになって?」
 ラギルニットは一気にそれだけを言うと、顔をそむけたまま舵台を駆け下りていった。ぱたぱたと足音がして、ぱたんと扉の閉じる音がする。恐らく、船長室に入ったのだろう。
「う、うわー。あれはクロック船長に何か言われたんスね」
 予想外の展開に、これまで飄々としてきたシャークまでが動揺する。
 そしておそるおそるとホーバーの横顔を覗きこむと、ホーバーは――。
『ホーバー殿! さあ、答えを!』
 執拗に答えを求めるクロックに、ホーバーは答えた。
「三十分だ」
『ホーバー殿、だからそれは……』
 鞘から短剣を引き抜く金属音。え、とクロックが言葉を途切れさせた直後、クロックの頬の脇に疾風、ズダンッと重たい音とともに、彼の背後の壁に何かが突き刺さった。
 おそるおそる振りかえると、壁には短剣の柄が埋まっていた。
「三十分でいいって言ってんだろ、“お義父様”……」
 青ざめて、言葉を失うクロック船長は、ホーバーの冷ややかな顔に口を引きつらせた。彼の腕は、まさに今、短剣を投げましたという格好で止まっている。
 ホーバーはそれ以上の返答は待たなかった。目を丸くするシャークとガルライズ、ひゅうと口笛を吹くクロルの前を横切り、舵台の階段を下りる。硬直していた船員たちは自然と道を譲り、ホーバーは誰にも顔を向けぬまま船内につづく扉を開けて、姿を消した。
 静寂。鳥籠から零れる美しい鳴き声だけが、響きわたる。
「……ふふ、ふふふ」
 ようやく我に返ったクロック船長は、痙攣みたいな笑い声をあげた。
「さすがわしの将来の息子だ。すっごい腕力。い、痛くない。わし、痛くないもんね……」
 遅れて、ぴっと噴きだした頬の血を丸い指でぬぐう。
 そして、その血をぺろりと舐めると、不意に冷たく微笑んだ。
「砂時計をここに持てい」
 すかさず用意された椅子に、どかりと腰を下ろす。
 クロックの脇には、三十分をきっちり測れる巨大な砂時計が置かれた。
 砂が、落ちる。

 船室に入ったホーバーは、しばらく黙々と薄暗い廊下を歩いた。
 その脚が自然と止まった。
「…………」
 ショックだった。
 想像もしていなかった。
 どんな事態も覚悟はしていたが、ラギルニットの一言はあまりに予想外だった。
 クロック船長に何かを言われたのだろうか。
 それともラギルニット自身が、そう感じたのだろうか。
 ハングリー・キング号に行け、と本当にそう……。
 溜め息がもれた。まったく、何て馬鹿馬鹿しい事態なんだろうか。たかがホーバー一人を引き抜くために、クロックはこれだけ大掛かりなことをして。船員全員を巻きこんで、あんな鳥まで用意して、どこまでも大袈裟に。
 そんな価値など、自分にありはしない。何度も言っているのに。
 この船にだって、どれほど必要とされているのか。
 見てみろ、ラギルニットだってあんな――。
 ホーバーは立ち尽くした。
 直後、背後で、扉が力いっぱいに開かれる音がした。
 薄暗い廊下に光が射しこむ。目を細めて振りかえると、甲板に通じる扉を開き、船員たちが鬼のような形相で立っていた。
「な、なんだ?」
 船員は顔を真っ赤にしながら、ずかずかと廊下に侵入した。うろたえるホーバーを歯軋りしながら壁まで追い詰める。後がなくなって、壁にぴたりと背中を押しつけたホーバーを、さらに上から圧し掛かるように見下ろして、うううとか、ぬぅうとか、変な鼻息をたてる。
「……な」
「てめぇ!」
 彼らの先頭に立っていた船大工のワッセルが、ついにホーバーの胸倉をつかんだ。とっさに目を閉じると、いきなり罵声を浴びせられた。
「なんで、ちゃんと断らねぇんだよ!!!?」
「ご、ごめんなさ……え?」
 その場逃れで謝りかけたホーバーは、理解不能な罵倒に首をかしげた。
「ちゃんと断れよ、このクソ副船長! なんで断らなかったんだ、ああぁ!?」
「そうだぞこん畜生! まさか本気で結婚を考えてるんじゃ……!」
「嘘だろ、なあ、おい、嘘だよな!?」
「……え。え?」
 どわわっと圧し掛かられて、ホーバーは困惑のあまりにすっとんきょうな声を上げる。途端に果てもなく列となって並んでいる船員たちが、とっかえひっかえで迫ってきた。
 彼らは、羞恥で全身真っ赤にしながらも、同時に叫んだ。
「結婚なんてするな、副船長ー!!」
「――!?」
 絶句するホーバーに、船員たちは次々と頬ずりやら抱擁やらをかまし、「うおおおお!」、「ぬぁあぁあああ!?」と自分のアイデンティティーと今まさに戦っているかのような謎の雄たけびを上げた。そのまま悲鳴を上げながら、一目散に船の奥深くへと逃げ去ってゆく。
 数秒後、廊下にはもみくちゃにされたホーバーと、数人の船員だけが取り残されていた。
「……ちっ」
 訳も分からず唖然としていると、壁によりかかって、ことの成り行きを見守っていたセインが、苦々しい顔で舌打ちした。
 乱暴な足どりでホーバーの横をすり抜け、肩を力任せに突き飛ばす。
「クロックの野郎になんか好き勝手させてんじゃねぇよ、クソ副船長」
 ふ、副船長?
 ひねくれ者のセインに副船長呼ばわりをされたのは、覚えている限りはじめてだった。動揺のあまりに声も出ないホーバーを残して、セインはさっさと去ってゆく。
 救いを求めるように顔を上げると、今度はレティクが颯爽とした足どりで近づいてきた。いつもと変わらぬ無表情さで傍らに立ち、そっと耳元に囁きかける。
「結婚するな、ホーバー。俺の側にいてくれ……」
 パキンッ。
 ホーバーは恐怖のあまりに凍りつく。
 クッと黒い微笑を浮かべて、レティクもまた去っていった。足取りが若干楽しげである。
「わかったか? ホーバー」
 最後に残ったバザークは、今しがた目撃してしまった参謀レティクの恐ろしすぎるジョークに青ざめながらも、ホーバーに問いかけた。
「まさか、誰も心配してないとでも思ってたんじゃないだろうな?」
「な、なにが……」
「みんな、お前に結婚してほしくないんだよ。事情が分からないなりに、不安に思ってんだ。というか、事情がさっぱり分からないことを不安に思ってるんだ。……お前が何も説明してくれないから。何の相談もしてくれないから。大丈夫って、言ってくれないから」
 ホーバーは力なく壁に背をもたれかけさせる。そのまま力なくずるずると背を滑らせ、床の上でへなへなになって、両手で顔を隠した。
「そ、そんなこと?」
「そんなことじゃない、大事だろうが」
「だ……って、そんな……大丈夫、って……心配って……」
 隠した顔が真っ赤に染まり、耳や首までが赤くなる。
「ちょっ……、恥ずかし……」
 まさか自分の結婚事が、船員たちに心配をかけているなど考えたこともなかったのだ。事情を説明できない理由がある、だがそれ以前に話す必要もないと思っていた。こんなばかげた話を、誰も心配するわけないと思っていたし、そこまで――必要とされているなど考えたこともなかった。
 ついには膝に顔をうずめてしまったホーバーの初心な反応に、バザークまでが恥ずかしくなって、ぱたぱたと顔を手で仰いだ。
「みんな、お前が好きなの。そんなの、本当なら死んだって言わない台詞だよ。お前が自分で気づいてくんなきゃ困ることなんだよ。それを……気づかないから、言うはめになって。……だから、ちゃんとフォローしろよ! 事情をきちんと話してくれ。でなきゃ、このままバクスクラッシャーは、気色悪い男乙女たちの巣窟と化すんだからな」
「…………」
「……だから、返事しろってば」
「……む、無理。今、無理」
 恥ずかしさのあまりの錯乱状態で、頭を抱えるホーバーだった。
 それをこっそりと、壁際から見つめていたシャークは、
「家政婦は見ちゃったっス! 絵師、絵師をここにー! 超かわいいっス、絵師に今すぐこの姿を書かせるっス、シャーク☆思い出のアルバムに貼って、末代まで受け継ぐっスー!!!」
「この天才絵師メル様を呼んだのは貴様かぁ!?」
「……だからカブはもういいっつーんだよ!」

+++

「それにしても、まさかラギルがあんなことを言うとはな……」
 凄惨な似顔絵大会の場と化した廊下を見つめて、ガルライズは呟いた。騒ぎから抜け出し、笑いながら野次を飛ばしていたシャークは、丸眼鏡をきらんと光らせる。
「そうっスね、完全なダークホースだったっス」
 ガルライズはシャークとちらりと目を合わせ、お互いに溜め息をついた。
「ほんっとに手のかかる、船長と副船長っス」
「下っ端は苦労するわねー」
 二人はクツクツと笑って、ひとたびの心和む光景を見つめた。

 その間も、砂は落ちつづける。
 網にかかるだけの獲物を待つ、血に飢えた王の元で。

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